interview pick up
何百本もあるインタヴュー記事の中から、特に好評だったもの、たくさん読んでもらえたもの、僕自身が思い出深いものを20本ピックアップ。絞るのが大変でしたし、ベスト20ということでは決してありませんが、これを読めば僕の仕事の特徴はおわかりいただけるのではないかと思います。なおタイトルは掲載先でつけてくれたものです。
これが初対面。当時はタイトルにもあるように「ひがみソングの女王」として注目を集めていましたが、僕は彼女がもっとオーセンティックな真・善・美を歌っていることを知っていました。しかしそちらを打ち出しすぎず、パブリックイメージに適度に合わせつつチラチラ覗かせていこうと臨んだ記憶があります。以来、何度もご一緒しましたが、本当に聡明で話していて楽しい人です。
『TOKYO』はベッド・インが普遍性を手にしはじめた記念碑的なアルバム。このころからファン層も明らかに広がっていきました。ただの面白お姐さんではないことは最初にライヴを見たときからわかっていましたが、いくつかのメディアがしていたようにシリアスに全振りすると、いろいろ背負わせることになってしまいかねない。面白とまじめのバランスにとても注意しながら毎回のインタヴューに臨んだものです。
『フェルマータ』には前作で見せていなかった部分がチラチラ顔を覗かせている感触があり、その部分を引き出すことでアーティストとして成長してくれたら、との願いを込めて、思い切ってつっこんでみました(本人からのご指名でしたし)。誰にでもいつでも通用する手法ではないけれど、このときの彼女はむしろそれを求めていたようです。とてもいきいきと楽しそうに自己開示してくれました。
デビュー時から6〜7回インタヴューしていますが、個人的にいちばんよく読み返すのがこれです。彼女が何に怒っているのか、あの巨大なエネルギーの源がどこにあるのか、とてもよくわかります。いまも引き合いに出す人が多い吉田健一の有名なテーゼ「戦争に反対する唯一の手段は……」の扱われ方への懐疑は見事で、僕も大いに共感しました。
同業者へのインタヴューは基本的にやりにくいものです。仕事ぶりを採点されているような気分にどうしてもなるので。尊敬する井上さんの場合は「東京在住関西人」というバックグラウンドを共有していることが幸いしたようです。内容に自負もありますし、Facebookでご本人がお友達に「このライターさん、すごいわ」と紹介してくれたのもうれしかったです。
著書を読んで「これは絶対に楽しい仕事になる」と直感し、その通りになりました。僕も編集・校正経験が豊富ということもありますが、何よりおそらく性格的な理由で共鳴し合えて、幸せな出会いでした。読んでくれた人たちの感想もうれしかったし、ポッドキャストのゲストに来てくれたりと、一度きりにならなかったのもありがたいです。
よく読まれたということで言えば、たぶん僕の執筆記事の最高記録だと思います。なにしろTwitter(現X)のトレンドトップですから。「卓球さんがまじめな話を!」と驚く人が多かったけれど、僕が何度かインタヴューした範囲では、彼はいつもまじめで真っ当です。お母さんとワンちゃんの話はたまたま僕が自分の親と猫の話をしたことで出てきたもので、インタヴューは毎回が一期一会だなと実感します。
現代のオピニオンリーダーと目されているのも納得のいく思索の深さと言語化のうまさ。「究極的にはひとり、個人に立ち返るっていうことが大事なんじゃないか」という投げかけにも共感しました。『ユリイカ』臨時増刊号での折坂悠太との対談構成は、この記事を読んでくれた編集者からの依頼でした。
ずっと「あ〜よかった (pal*system mix)」の話だけと思い込んでいたのですが、当日の朝に「アルバムが出るのでその話もしてください」と資料が送られてきました。聴けたのは一回きりでしたが、第一印象をこわごわ投げかけたらことごとくクリーンヒット。リモートにもかかわらず大いに盛り上がり、その後お互いのポッドキャストやイヴェントに出演し合うなどの親交もできたという、幸運な仕事でした。
小指さんの漫画が大好きな僕にとっては念願叶ってのインタヴュー。手軽な手本や参考資料が掃いて捨てるほどあるこの時代に、これほど不器用に悪戦苦闘して(前半生のほとんどを費やして)独自の表現スタイルを手に入れる人も珍しい。だからこそ、その表現には稀有な力が備わっているのだと思います。
アルバムのプロモーション期間が終わってから「まだ話していない大事なことがあるので、高岡さんに聞いてほしい」とご指名をいただいたときは、責任の重さに武者震いがしました。息が詰まりそうな空気が流れるレコード会社の会議室で、言葉を選びながら訥々と、しかし正直に話してくれました。聞くだけでぐったり疲れたので、本人の精神的負担は計り知れませんが、それに足る特別な内容になったと思います。
彼らのインタヴューはたぶんほとんどラップ専門のライターがしていて、畑違いは僕ぐらいだったはずです。二人のたたずまいはどこまでも儚くて美しく、話す言葉にも深い手応えがありました。この後にお邪魔したライヴのすばらしさも込みで印象深く、傑作『Mars Ice House』はいまも愛聴しています。
とにかくファンのみなさんが喜んでくれた記事です。たくさんある槇原さんのインタヴューでもあまり話されていない、しかし僕が重要と感じてきた側面を引き出そうと頑張りました。記述はさらっとさせましたが、きっちり読み取ってくれた人がいて、その感想はうれしかったです。
3度めのインタヴュー。聡明でサービス精神旺盛で、謙虚のあまり自虐ネタに走りがちなところとか、ちょっと自分と似たところがある気がしていて(聡明を除く)、いつも楽しいのです。「友人同士でおしゃべりしているみたいで楽しい」とSNSに感想を書いてくれた人がいましたが、一方的にちょっと友情にも似た感覚があるからかもしれません。
『女子高生ゴリコ』で漫画家デビューしたころに編集仕事でコラムをお願いしたことがあるしまおさん。そのときは電話とメールだけだったので初対面でしたが、かっこつけず取り繕いもせず、いたって率直な口調が印象に残っています。「感想は意識的に書かないように努めている」「SNSで意見表明なんかしたくない」という話は腑に落ちました。
アルバムを一聴して、やりたいことも、好きで大切にしていることも、手に取るようにわかった(ような気になった)のを覚えています。「きれいごとだと思うし、ダサいと言われるかもしれませんけど、こういうふうに誰かが歌わないと、信じる思いみたいなものって消えちゃうよなと思って。私は胸を張ってストレートに平和と愛を歌っていこうと」という発言には胸が震えました。
和田靜香
フリーライターが国会議員に「ド厚かましく」聞いた。『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?』和田靜香インタビュー
和田さんとは旧知の仲ですがインタヴューは初めてで、特別な感慨がありました。小川議員とのやりとりも面白かったけれど、「絶対に守りたかったんです、この本を。何があろうと、誰に何を言われようと、自分の思うのと違う形には変えたくない、わたしのやり方で完遂したい、っていう絶対的な思いがありました」という言葉に、尊敬を新たにしたものです。
水曜日のカンパネラの2代目主演・詩羽さんへの初インタヴュー。相手を気遣いながらもしっかりと自己主張し、力まず自然体でセルフラヴを訴えていて、ご両親よりさらに上の世代のおっさんとしては「日本人もとうとうここまで……」という感慨がありました。ライヴを見るたびに成長していて、2024年3月の日本武道館でも悠々とかましてくれそうです。
これもたくさん読まれました。ロマンさんには卓球さんとも通じる「真っ当な傾奇者」みたいなイメージがあります。「相対化なんてウソだ、自分で恣意的に選んでるんだ」「『好き嫌い』と『いい悪い』は別の話」「割り切れないところがいちばん面白い」「見てるってことは、向こうにも見られてるってこと」といったスタンスは僕も共有するところです。
2001年生まれの22歳(当時)ですが、小学生でデビューした10年選手だけに堂々としていて、物腰は終始明るくエナジェティック。つい「なんだか今日は新しい友達が見つかった気分です」と笑ってしまったくらい楽しい仕事でした。甲田さんもSNSで「おしゃべりマンの愉快なインタビューをぜひ」と紹介してくれましたが、会話が好きで、楽しもうとしているところが通じていたのかもしれません。だいぶ脱線しましたが、分量に上限がなかったのでたっぷり盛り込み、先方からの修正もほとんどありませんでした。もちろん「らぶじゅてーむ」の話もしっかり聞いていますよ!